※図は日本消化器外科学会ホームページ(2020年2月)から引用
胆道とは、肝臓でつくられる胆汁を十二指腸まで運ぶ道(管)のことです。その管は肝臓の中を走り、合流して徐々に太くなり、左右の胆管(左・右肝管)となります。途中に胆汁を蓄え、濃縮する袋が存在し、これが胆嚢です。そして、1本の総胆管となり十二指腸乳頭部につながっています。
十二指腸乳頭部は胆管の出口で、胆管と膵管は合流し、括約筋により胆汁の流れが調節されます。
胆汁は、日常の役目を済ませたり余ったりしたコレステロールから合成された胆汁酸や、古くなったヘモグロビンから生成される抱合型(直接)ビリルビンなどが主要な成分となり、肝細胞で生成されます。
胆汁には、消化酵素は含まれませんが、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)が含まれます。
食事を摂ると、胆嚢は収縮して、貯めていた胆汁を胆嚢管から総胆管を通って十二指腸に排出し、脂肪の消化・吸収の助けをします。消化後には、胆汁が混じることで便は茶色になり排泄されます。
胆石とは、胆嚢や胆管のなかで胆汁成分が固まってできた固形物のことで、これによって生じる病的状態が胆石症です。胆石症は胆石のできている部位により「胆嚢結石症」「総胆管結石症」「肝内結石症」に分類されます。胆石は胆嚢に最も多く、一般に胆石症といえば「胆嚢結石症」を指します。
日常臨床において、最も多い疾患のひとつですが、近年の食生活の急速な変化により、胆石症の臨床像も変化しつつあります。日本において胆石保有者の総数は平成2年度までは増加していました。しかしそれ以降、胆石症の動向については、疫学調査が行われておらず最近の詳細は不明ながら、成人の約10%に胆石を認めると推測されます。
胆石があるからといって、必ずしも症状があるわけではありません。
胆石の症状には、腹痛、悪心、嘔吐などがあります。胆石による疼痛は「胆石発作」といわれ、発作は深夜の過食、脂肪の豊富な食事などによって誘発されることがあります。
疼痛は右上腹部あるいは心窩部に生じ、右肩甲骨、右肩への放散痛が生じることが多く、2~3時間継続した後に治まることがあるのも特徴です。胆石を持っている患者さんの約半数に疼痛が出るといわれており、最も多い自覚症状です。
急性胆嚢炎の症状以外に黄疸が出現した場合は、シャルコーの3徴と呼ばれる総胆管結石による急性胆管炎を起こしている症状であり、緊急の治療が必要になります。
なかには急性閉塞性化膿性胆管炎とよばれる重篤な病態があり、シャルコーの3徴に精神症状(嗜眠傾向)・エンドトキシンショックの2つを加えた、レイノルドの5徴を呈することがあります。この場合には不幸な転帰をとる恐れが高くなります。
検査方法には、血液検査(炎症反応、肝機能など)、腹部超音波検査やコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)を使用した胆管膵管撮影(MRCP)、内視鏡的逆行性胆膵管造影法(ERCP)といったものがあります。
それぞれの検査法には特徴があり、胆石のある場所や状況により検査法を選んで診断を進めていきます。
胆石による痛みなどの症状(胆石発作)がある場合には何らかの治療が必要になります。
しかし、将来的に症状を発症する危険性の高い人や、胆嚢の壁が厚い人は、対応を検討する必要があります。
症状を発症する危険性の高い人として、
などがあげられます。
胆石の手術は基本的には胆嚢ごと取り出します。手術は従来の開腹手術よりも、全身麻酔下でお腹に穴を開けて行う腹腔鏡下胆嚢摘出術が第一選択の術式になっています。
腹腔鏡下胆嚢摘出術では、お臍に約1cmの切開をして炭酸ガスを注入してお腹を膨らませます。鉗子などの手術器具2本とカメラを使用して胆嚢を体外に取り出します。
おなかの傷は1~4ヶ所で、傷が小さいので体への負担が軽く早期社会復帰が可能です。
(手術の傷)
(腹腔鏡の手術方法)
腹腔鏡下胆嚢摘出術
※図は日本消化器外科学会ホームページ(2020年2月)から引用
総胆管結石の治療は、内視鏡的治療などだけでなく、腹腔鏡下胆管切石手術も積極的に行っております。利点は、十二指腸乳頭機能の温存、胆嚢・胆管結石の治療が1回の手技で同時に行うことができ、創が小さく低侵襲で早期退院・早期社会復帰が可能となります。
(左上図)総胆管を確認 (右上図)総胆管を切開し、内視鏡で結石を確認
(左下図)総胆管結石を摘出 (右下図)総胆管を縫合、閉鎖し終了
総胆管結石症の治療には様々なものがあります。普及している内視鏡的総胆管結石摘出術には2種類の方法があります。
まず「内視鏡的逆行性胆膵管造影法(ERCP)」という方法で、十二指腸乳頭(胆管の出口)へと内視鏡を挿入していき、そこから造影剤を注入して胆管・膵管を造影します。引き続き「内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)」という方法で、十二指腸乳頭の胆管の出口を切開することで胆石を出しやすいようにして、バスケット鉗子という処置器具も用いて胆石を把持して十二指腸に摘出する方法です。
(左図)総胆管結石に存在する結石 (右図)結石を内視鏡治療により除去しています。
もう一つの方法は、乳頭口を風船で拡張させて緩め、バスケット鉗子を使って胆石を十二指腸に摘出する「内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)」です。また、腹壁から肝臓を通して、胆管に針を刺し、広げて通路を作った後に、そこから胆管へ直接胆道鏡を入れ胆石を除去する方法(「経皮経肝的内視鏡(PTCS)下切石術」)もあります。
コレステロール胆石は薬で溶かすことが出来る場合があります。レントゲン写真に写らない(石灰化のない)、大きさが15mm未満のコレステロール胆石ならば、胆嚢の働きが正常であれば溶けます。コレステロールは脂質の一種なので石鹸の働きをする胆汁酸の薬(主にウルソデオキシコール酸)を使えば溶かすことが出来るのですが、石灰部分は脂質ではないので溶けません。
薬の効果を評価するには6~12ヶ月が必要とされており、少なくともその期間は薬を飲み続ける必要があります。ただ、ウルソデオキシコール酸単独では6ヶ月で24~38%の胆石が溶けるとされていますが、溶けたあと放っておくと12年間で61%に再発すると報告されています。薬を続けていると16%に抑えられます。
胆嚢結石症に対するESWLの適応として、消失する可能性が高い結石を選択します。
我々が以前施行した全国調査報告の結果から結石の最大径や個数は非常に重要であることが再認識されています。
その結果をもとに当院では、
を胆嚢結石に対するESWLの基本的な適応としています。
総胆管末端に嵌頓した総胆管結石は内視鏡的結石除去が困難となることが多いです。
こうした状況に対して、ESWLと併用した内視鏡治療が行っています。