胃の主な機能は、食物の貯留・ 攪拌 ・排出です。
貯留:食べ物をいったん貯留し、消化吸収のための準備を行います。
攪拌
:胃の壁は、食べ物を混ぜるために厚い筋肉で作られ、内側には粘膜という柔らかい組織で覆われています。
粘膜からは胃酸と消化酵素を含む胃液が出ますが、胃自体が消化されないように保護する粘液も出てきます。
排出:胃で消化された食物がかゆ状になると幽門が開いて十二指腸に運ばれます。
胃がんは、日本、中国、韓国をはじめとする東アジアに多い病気です。
日本では、男性で89,000人、女性で40,000人、1年間に合わせて約130,000人ほどが罹患しています。男性では最も多く、女性では3番目に多いがんです。
5年生存率と言われる治癒率は約60%程度ですが、早期に見つかれば90%以上の治癒が見込めます。
胃がんは、胃の壁の内側を覆う粘膜の細胞が、様々な原因でがん細胞になり、増殖していくことにより発生します。
ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)感染や、喫煙や食習慣(塩分の多い食事や、野菜と果物不足)が胃がんを起こすリスクとされています。
胃がんになりやすい人としては、ピロリ菌に感染している、または感染していた人、潰瘍や胃炎の既往がある人があげられます。
胃がんの方のほとんどは、ピロリ菌に感染しています。
胃の粘膜に発生したがんは、大きくなるに従い、胃の壁に深く侵入していきます。徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に深く進んでいき、胃の壁の外まで広がり、腹腔内に散らばったり、もしくは、胃の壁の中のリンパ液や血液の流れに乗って、肝臓、肺やリンパ節など他の臓器に転移したりします。
N1:領域リンパ節(No.1~12、14v)の転移個数が1~2個
N2:3~6個
N3:7個以上
M1:領域リンパ節以外の転移がある(CY1も含む)
などがあり、当院では胃切除を中心に、内視鏡治療や薬物療法なども行っています。
胃がんの治療法は、がんの進み具合、いわゆるステージ(病期)に基づいて決まります。
がんが切除できる場合は、内視鏡治療または手術治療が選択されます。
しかし、進行度によっては薬物療法や放射線治療が優先される場合があり、再発予防のために薬物療法を行うこともあります。
胃がんの手術治療にはさまざまな手術方法があります。
基本的には胃がんを含めた胃とその周囲のリンパ節を取り除きます。
代表的な手術療法は、胃の約3分の2を切除する「幽門側胃切除術」と、胃をすべて切除する「胃全摘術」および胃の口側を切除する「噴門側胃切除術」があります。どの術式も胃の周囲に存在するリンパ節も一緒に取り除きます。
切除する胃の大きさ、リンパ節を取り除く範囲は、がんの大きさ、リンパ節の状況により決まります。
胃の約3分の2を切除し、残った胃と十二指腸または空腸と縫いつなぎ合わせます。
胃を全部切除し、食道と空腸を縫いつなぎ合わせます。
食道と残胃を吻合します。食道への逆流防止のために噴門形成を追加したり、食道と残胃との間に小腸によるパウチを置くようにしています。
胃がんに対する腹腔鏡手術は、安全性が確認され、現在は保険給付の対象となっています。しかし、技術的難易度も高く施設ごとの適応は違います。
当院では、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医である医師により、安全に手術できる様に体制を整えています。手術に関しては、待機手術の90%以上を腹腔鏡手術で行っております。
幽門側胃切除術、胃部分切除術にとどまらず、ほとんどの胃癌術式において腹腔鏡手術を導入しており、症例に応じて根治性を考慮したうえで腹腔鏡手術を積極的に実施しています。吻合は全例で体腔内吻合にて行い、創をできるだけ小さくした完全腹腔鏡手術を行っています。
【日本消化器外科学会HP】(※)消化器外科専門医を検索する >>
【日本内視鏡外科学会HP】(※)技術認定医 >>(ログインが必要です)
近年、腹腔鏡下胃切除術は全国的に急速に普及しており、適応も拡大傾向にあります。当院でも腹腔鏡システムを一新し、最新の機器・設備を導入し、より安全かつ低侵襲な手術を提供できるように工夫しております。
などが挙げられます。
胃がんの転移の仕方(経路)には、大きく分けて次の3種類があります。
血行性転移
胃や腸から流れ出る血液は肝臓に流れます。がん細胞が血液に乗って流れていくことで肝臓や肺への転移は起こります。このような転移を血行性転移といいます。胃がんが転移する臓器は肝臓が最も多く、次に多いのが肺です。そのほか、骨や脳に転移することもあります。
播種
腹膜播種は、がんが胃の漿膜の外側に出てきた場合に、そこからがん細胞が腹腔内に散らばって、腹膜などに生じる転移です。おなかの中全体で広がるように増殖すると「腹膜播種」または「がん性腹膜炎」と呼びます。
リンパ行性転移
がん細胞が大きくなるにつれて、胃の壁の中にあるリンパ管に入り込んできます。リンパ管の流れのなかのリンパ節には、免疫の働きによって病原体を攻撃し排除する機能があります。
しかし、がん細胞がリンパ節での攻撃に打ち勝つと、そのリンパ節の中で増殖を始めます。これを「リンパ節転移」といいます。リンパ管は全身に張り巡らされているので、リンパ管を通じて次のリンパ節に流れていき、そこでまた増殖します。このような転移を「リンパ行性転移」といいます。
胃がんに対する治療法にはいくつかありますが最も一般的なのが手術による治療です。
そのほか抗がん剤を用いた薬物療法があり、また放射線療法もありますが一般的ではありません。
一部の早期胃がんに対しては内視鏡を使ってがんを切除します。
ただしリンパ節転移の可能性のある人に対しては行えません。
当院では胃がんガイドラインに沿った適応で内視鏡治療を行っています。
根治する可能性は非常に低く、特殊な遠隔転移を縮める目的で行われることがほとんどです。
切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法は、最近の進歩により高い腫瘍縮小効果を実現できるようになりました。しかし、化学療法による完全治癒は現時点では困難であり、生存期間の中央値はおおよそ6~13ヶ月です。
癌の進行に伴う臨床症状発現時期の遅延および生存期間の延長が当面の治療目標です。
術後補助化学療法とは、治癒切除後の微小遺残腫瘍による再発予防を目的として行われる化学療法です。
手術からの回復を待って、術後6週間以内を目標にTS-1という抗がん剤の内服を開始します。標準量80mg/m²/日を4週間内服し、2週間休薬するコースを1コースとし、術後1年間継続します。
術後補助療法では血液毒性・非血液毒性とも出現しやすいので、抗がん剤の内服量を減らすか、投与スケジュールを2週間内服、1週間休薬に変更するなどの対応を行っています。
胃がん手術後の生活指導および胃切除後症候群に対する治療を行い、再発リスクに応じて計画的にフォローアップが必要となります。当院では、術後は5年間以上のフォローアップを原則としています。