鼠径ヘルニアは『脱腸』とも呼ばれ、足の付け根あたり(鼠径部)が膨らむ病気です。
筋膜が薄くなっている部分から、本来はお腹のなかにある腹膜や腸などの内臓が外に飛び出してしまった状態です。
子供の病気と思われがちですが、50歳代以上の方が特に多い病気です。80%以上が男性で、男性の3人に1人は一生涯で一度は鼠径ヘルニアを発症する可能性があります。
鼠径部は生まれる前に睾丸や子宮を引っ張る管が通過するため、筋肉(筋膜)に孔が開いています。この穴の部分がきれいに閉じてないとヘルニアになります。
鼠径部にできた膨らみが、出たり入ったりするのが典型的な症状です。おなかに力を入れたときには飛び出し、力を抜いた時や手で中に押すと戻ります。
立って活動した後の夕方は膨らみ、横になっていた後や朝起きた時にはわかりにくくなります。
しかし、ヘルニアの『嵌頓(かんとん)』といって、飛び出した腸などの内臓がお腹のなかに戻らなくなることがあります。その場合、内臓への血の流れが悪くなり、最悪の場合内臓が腐ってしまいます(壊死)。放置すると、腸閉塞、腸管壊死、腹膜炎となり、緊急手術が必要になります。
成人鼠径ヘルニアは自然治癒はなく、手術で治療するか経過観察していくしかありません。
痛みがなく鼠径部が膨れるのみなど症状の軽い患者さんの嵌頓率は、年間で1%程度ですが、発症後3ヶ月以内、50歳以上の方は比較的嵌頓が生じやすいといわれています。
無症状、もしくはわずかしか症状がない鼠径ヘルニアの患者さんでも、そのうち70%のかたは、いずれ痛みなどの症状が発生し手術が必要となる、とされています。
手術治療では、飛び出した内臓をおなかの中に戻し、その穴を塞ぎます。
1990年代までは筋肉を縫い合わせる方法が主流でしたが、現在では人工物(メッシュ:人体に使用しても安全な化学繊維)を用いて補強する方法が主流となっています。
脱腸帯という体の表面から圧迫するベルトがありますが、これは抑えているだけで治療にならないばかりか、状況によっては飛び出した内臓を傷つける場合がありお勧めしません。
鼠径ヘルニアの手術方法の一つに、腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術とは、操作鉗子をおなかの中に挿入し、腹腔鏡の画像を大きなモニターに映し出して行う手術です。
腹腔鏡手術では鼠径部のヘルニアになりやすい5つの弱い部分(内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、外側三角部、閉鎖管部)を1枚のメッシュで全てしっかりと覆うことが出来ます。
鼠径ヘルニアの手術方法の一つに、腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術とは、操作鉗子をおなかの中に挿入し、腹腔鏡の画像を大きなモニターに映し出して行う手術です。
腹腔鏡手術では鼠径部のヘルニアになりやすい5つの弱い部分(内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、外側三角部、閉鎖管部)を1枚のメッシュで全てしっかりと覆うことが出来ます。
この方法には、大きく分けて
などがあります。
短所は全身麻酔が必要となることが挙げられます。
全身麻酔に伴う危険性が高い方の場合、例えば心臓や肺の機能が悪い方や、喘息の方の場合は、脊椎麻酔でできる従来の方法が望ましいです。
また、過去に下腹部の手術をされたことのある方も、癒着の影響で腹腔鏡手術が適応とならない可能性がありますので、一度ご相談ください。